Z33(350Z)の入庫です。
ずいぶんマッシブな見た目ですが、映画ワイルド・スピードシリーズの3作目TOKYO DRIFTに登場するヴェイルサイド仕様のZですね。
今回の修理箇所は左リアのオーバーフェンダー割れ修理となります。
ビスの取付部は一部欠損してしまっています。
ノーマルのZより車幅がかなりワイドになっているので左リアはとくに注意ですね。
さて、修理にあたりオーバーフェンダーを取り外さなければいけませんが一抹の不安が…
(これだけ大型のパーツだしパネルボンドとかでがっちり固めてあったらどうしよう…)
結果ビスを全て抜いたらすんなり外れました!(良かった~)
フィッティングもかなり良く、ピッタリはまっていました。
中のクォーターパネルは叩き出してシーリングで処理してありますね。
問題のエアロですが、なかなかのダメージです。
画像上のほうの白く見えている箇所は裏まで亀裂が貫通しています。
また画像ではほぼ見えませんが蜘蛛の巣状の亀裂が全体に広がっています。
ホイールハウス側にも蜘蛛の巣が。
見えないと思いますが上面が一番酷いです。全体にわたって蜘蛛の巣が広がっています。
過去にも何度か書きましたが、FRPのこうした亀裂は一見して深くなさそうなので表面の塗膜が割れているだけに見えますが、大方違います。
ほとんどの場合、一番下のFRPの素材まで割れています。
なので表面を軽く削ってパテではダメなんです。
数ヵ月もしたらきっと亀裂が浮き出てきます。
YKBではFRPの亀裂修理は亀裂を一度深く抉ってからFRPでがっちりと固めてからパテで処理します。
抉った上でパテより硬いFRPで固めるので、その上ならパテをつけても亀裂が浮き出る可能性がグッと下がります。
ということで、亀裂や割れの箇所はザクザクと削っていくわけですが、側面の一部は既に裏まで亀裂が貫通しているのでこのまま削ると大穴が開いてしまいます。
そうなると処理が大変なので、先に裏側にFRPを盛って表を削ったときに大穴が開かないようにしておきます。
固めたFRPが厚すぎる箇所は後で削って整えますが、今は穴が開かないことが大事なのでしっかり盛りました。
ザクザク削っていきます!
蜘蛛の巣状の亀裂が見えるでしょうか?このように塗膜の下まで亀裂が入っています。
FRPを削っていると首まわりや足首あたりがチクチクしてきました~。
FRPのガラス繊維はようするに微細な針のようなものなので体に付くとチクチクして痒くなるんです。
夏よりはマシですが… 早くシャワーを浴びたいです 笑
FRPを張り付けました。
すっかりゴテゴテになって形が崩れてしまいましたが、亀裂の再発を防ぐためなので仕方ありません!
ここから元の形に復元していくのがまた大変なんです 泣
FRPの樹脂は固まるまではトロトロの液体です。張り付けても側面などは重力で垂れてきてしまいます。
なので今回のような場合は何回かに分けなければいけません。一面を張り付けて固まったらエアロを傾けて別の面に張り付け、固まったらまた別の面と…
YKBで使用しているFRPは熱では硬化しません。乾きはしますが硬化はしません。
紫外線に反応して硬化します。
今の時期ですと気温も低く日差しが弱いのでなかなか固まってくれません。
時間がかかりましたがFRPでほぼ元の形にできました。
FRPでおおよその形が作れればその後のパテも薄く済みます。
パテの厚盛りによる後々のパテ痩せなどのリスクも下がります。
欠損していたビス穴部分もFRPで作り直しました!
表のFRP貼り付けが済んだので最初に盛っておいた裏側のFRPをある程度削ります。
重量が増えればエアロへの負担も増すので強度を確保できる程度までにしておきます。
パテの成形が終わりました。
簡単そうな形に見えて、面が湾曲していて流線的なので意外と難しかったです。右側のエアロを確認しながら頑張ってアール具合を再現しました。
サフェーサーを入れて乾燥後、水研ぎで細かく整えたら塗装です!
黒の部分も塗装が必要なので先に色を吹きます。
いつもは2回に分けて塗装しますが、今回は小範囲なので1回で塗り分け塗装をしていきます。
黒の塗装が終わったら触っても問題ない程度まで乾燥させます。
この後この上にマスキングをするので乾いていないと、せっかく塗った黒が剥がれてしまいます。
色がかからないように黒い部分をマスキングしてグレーの塗装です。
特に黒の部分はソリッド(単色)なのでメタリックが少しでも乗ると光に当たったときキラキラしてしまいます。
そうならないようにしっかりマスキングします。
グレーの塗装が終わり乾燥したら慎重にマスキングを剥がします。
問題なさそうなのでクリアで全面をツルっと仕上げます。そうすることで色の境目にありがちな爪が引っ掛かるような段差を軽減できます。
クリアの塗装が終わりました!
乾燥後に取り付けて磨けば完成です。
完成です!
なるべく長く綺麗な状態を維持できるように心がけた作業方法をとっています。
FRP修理はとくに時間がかかりますが気になる方は一度ご相談下さい。
型が無いと復元できないような損傷以外は、頑張らせていただきますよ! 笑