アウディ初代A8の入庫です。
ボンネット、ルーフ、トランクの3枚、いわゆるアッパー面の経年劣化した塗装の修理をご依頼いただきました。
アッパー面は日光(紫外線)をもろに受けるので側面に比べてどうしても劣化しやすいです。
過去に全塗装の色替えをされているようですが、前述のパネルの所々に劣化による色の剥がれが見られます。

お客様はこちらの車に大変愛着をもっておられ、今まで整備などにもお金をかけて乗り続けてきたそうです。まさに愛車ですね！
今回の修理にあたり鈑金屋さんを数十件調べた中からYKBを選んでいただいたようです。大事な愛車を預けるなら慎重に選びたい、いい加減な所には出したくないのは同じ車好きとして私達もよく分かります。
がんばってピカピカに復活させますよー！

お客様がここが気になると注文された箇所はもちろん、お客様が気付いていない劣化や凹み・傷はないかよくチェックします。
無ければベストですが、よく見てみると色の剥がれまでは進行していませんがプツプツと劣化が始まりかけている箇所がいくつもありました。
こういうのは放っておくとどんどん進行します。今回は部分補修ではなくパネルを1枚塗装するので悪い部分は全て修理します。
プツプツ程度の初期段階の劣化ならクリアを塗ってしまえば塗った直後は綺麗に分からなくなったりします。でもそれではダメなんです！高確率で後からまた浮き出てきます。
塗装は下地がとても重要です。悪い下地の上にいくら綺麗に塗装しても、後から下地が影響して表面に不具合として現れます。
基礎工事がいい加減な上に家を建てれば家が傾くのと同じです。前工程の作業が次の工程に大きく影響してくるので小さな手抜きでも積み重なれば、しわ寄せを受けた最終的な仕上がりのクオリティは下がります。

ルーフは劣化や色剥がれが始まりかけているところが多かったのでサフェーサーが広範囲になりました。
作業していて気づきましたが、どうやら前回の全塗装はクリアを塗らずに仕上げてあるようです。2液型の塗料ですね。
それはインチキをしているということではなく、前回の業者さんはそういう種類の塗料を選択されたということです。
車の塗料は1液型と2液型に分けられます。大まかに説明すると1液型はカラーベースを塗装した後、硬化剤を混ぜたクリアを塗装して仕上げます。
対して2液型はカラーベースに硬化剤を混ぜて塗装して完成といった種類の塗料です。クリアは塗られていません。
全てかは分かりませんが国産車のソリッド白は基本的にクリアが塗られていません。白以外も一部のソリッドカラーはクリアが塗られていません。
クリアで表面が覆われていないので謂わば色が剥き出しの状態です。新車の時はいいですがクリアが塗られている車に比べて劣化も早いです。
国産車のソリッド白の車でツヤが引いていたりガサガサなのが多いのはそのためです。輸入車はソリッド白でもクリアが塗ってある場合がほとんどです。
2液型で塗装すればクリアを塗らなくていいので作業時間の短縮や材料代も浮きます。ソリッドの白は2液型で塗るといった鈑金屋さんは現在でも多いと思います。
しかし前述したようにクリアが塗られていないので小まめに手入れしないと劣化も早いですし、仕上がりの艶感もやはりクリア仕上げに比べ劣ります。
YKBでは2液型の塗料は使用していないのでソリッドの白であっても1液型カラーベースで塗装しクリアで仕上げます。

塗装後エンブレムを元の位置に貼るために目盛り付テープで写真を撮っておきます。

今回エンブレムは再使用するのでエンブレムを割らないようにとくに慎重に外します。細い文字などは無理に曲げると亀裂が入ってしまったりボディに余計な傷をつけてしまいます。
この後残った両面テープを綺麗に剥がして両面テープを文字に合わせて貼り直して再使用できるようにします。

マスキングをして塗装です！

お客様が途中経過を見に来店していただいた際に追加作業の注文をいただきました。
ドアミラーの黒い部分に樹脂パーツ用の艶出しコーティング剤を塗っていたそうですが、最初は綺麗だったのに年々悪化していきずっと気になっていたようです。
見たところワックス分で短期間表面に艶を出すタイプというよりガラスコーティングのようにある程度硬さのある被膜を形成するタイプのようです。
残ったところと剥がれたところで斑になってしまっています。
#1500のペーパーで水研ぎして表面の古いコーティング、劣化した素地を綺麗に研ぎ落します。
その後黒を塗装し艶消しクリアで仕上げます。通常のクリアでピカピカにも出来ますが艶消し仕上げの方がより自然だと思います。

完成です！