全塗装でE46の入庫です。今回は外側のみの全塗装でドアの内側や開口部などは塗装しません。

フロントバンパー前面は飛び石による塗装剥がれで白い点が多数。

一番劣化が酷いのはやはり日光をもろに受けるアッパー面です。一部はクリアが剥がれて色が剥き出しの状態です。

その他にも小傷や小さな凹み、車全体の艶引きが見られます。年式相応といった感じですが新車のように蘇らせましょう!

下地処理を進めていき、

まずはアッパー面3枚の塗装です。

乾燥後に残りの側面を塗装します。

マスキングをして側面の塗装です。

ここでマスキングのお話を。
今回は外側のみの全塗装なので内側に色がかからないようにマスキング(養生)をする訳ですが、マスキングも奥が深い作業で絶対的な正解はありません。
人によって貼り方は様々でお店単位というより職人さん単位で微妙に変わってきます。
このマスキングの仕方で細かな部分の仕上がりに大きな違いが出るので重要な作業です。
例えば画像のドア開口部のマスキングですが、YKBではマスキングテープを折り返したものを貼ります。リバーステープと言ったりもします。
わざわざ自力でリバーステープを作らなくてもいいように材料メーカーから「ぼかしテープ」というものが販売されていますが仕上がりが一段劣ります。
具体的には際の肌がボソボソになってしまいます。リバーステープでも多少はなりますが、軽く磨く程度で馴染む具合に仕上がるのでこの方法をとっています。

なんの為にこんな面倒なことをするかというと、リバーステープを使わず画像のようにピタっと貼ってマスキングしてしまうと、塗装時にミストが入り込みマスキングを剥がした後にくっきりと境界線が入り塗装したのが丸わかりになってしまうからです。塗膜に段差も付きエッジからの数ミリはザラザラになってしまいます。
この方法でマスキングして過去に塗装したであろう車をたまに見ますが、塗装してあるなと一発で分かります。
マスキングは本当に人それぞれで他にも予算など様々な事情があるとは思いますので否定はしませんが、車に興味のない一般ユーザーさんなら気づかなくても、少し目の肥えた方なら気づいて指摘されてしまいます。
より自然で塗装したのが分からないような仕上がりのためにはひと手間が必要になります。

こんな感じで貼ったらドアを閉めます。もちろんドアの裏側にもマスキングをします。
テープを折り返したことによって際の部分が完全にピタっと張り付かず僅かに隙間がある状態なので、ミストがかかってもハッキリとした境界線が出来ない仕組みです。エッジ幅のザラつきも最小限に抑えられます。
テープの折り返し幅やエッジに対してどれくらい中に入れるか出すかも状況に合わせて微妙に変えます。

さて、色を吹き終わったら時間を置いて溶剤を揮発させてからクリア塗装に移ります。

ボディの塗装はこれにて完了です!

前述した開口部のマスキング部分も自然な仕上がりです。
軽く手磨きしただけですが、バツっとした切りっぱなし線もザラつきもないのでいい感じです。

次はパーツ類の塗装です。

これにて塗装の工程がほぼ完了しました。

大まかな組付けを済ませ塗装面を磨いて仕上げていきます。

いつものようにルーフのみ先に仕上げました。磨きによって更にツヤツヤになりました。
車によっても変わりますが、全塗装の磨きは新車時の塗装肌より若干落とし気味(磨き込み)に仕上げています。
あまり磨き込まなければ新車時と同じような肌で仕上げることも出来ますが、新車時から肌が荒め(ゆず肌)の車もあります。それを再現しすぎてしまうとせっかく綺麗にしたくて全塗装したのに車全体がもっさりした印象になってしまいます。
こちらのE46も新車の塗装肌は若干荒めだったので磨き込んでいきます。
かといってロールス・ロイスやセンチュリーのような肌がない鏡面までやってしまうとそれはそれで違和感があります。テラテラ過ぎてあからさまに『塗りました』感が出てしまいます。
肌は残しつつ新車肌より1トーン落として自然なツヤツヤ感に仕上げるイメージです。
通常の修理では車全体を塗装するわけではないので周りの肌に合わせて磨きます。塗装したパネルだけ肌を落としすぎても浮いてしまうからです。

ボディの磨きが完了しました。アウターハンドルやミラーカバーといった小パーツも磨いてから車体に取り付けていきます。

残りの塗装も済ませます。フロントピラーからクォーターにかけて取り付くレインガーターモール。水が流れるための雨どいです。
劣化による表面のウロコ模様が目立ったのでお客様は交換も視野に入れていましたが、この部品は廃番だったため塗装します。
もう1つはリアバンパー下部に付くパーツです。

こちらはオリジナルと同じく艶消しで仕上げました。

最後に新品のモールを取り付けたら、

完成です!

全塗装によって塗膜が綺麗になると劣化したモールやエンブレムなど細部がより目立つようになってしまい、今まで気にならなかったのに気になってしまうのはあるあるです。
ですが今回はお客様の要望でガラスのゴムモールやフロントロアグリル、車体を取り囲む素地モール一式など劣化していた部品は概ね新品に交換したので全体が引き締まりました!
素地モールに関しては在庫1点限りの部分も数点あったのでタイミングも良かったです。部分的に古いままにならず全て新品に交換できましたので。
リフレッシュした愛車でこの先も楽しんで下さい!

Before/After