一宮市より入庫のスパイダー。
初代の最終型、シリーズ4と呼ばれるモデルでしょうか。今ではめったに見かけない珍しい車です。30年ほど前の車ですからね~✨

同色での全塗装をご依頼をいただきました!同色ですが今回はボンネットの裏やドア開口部などの内側も塗装します。
少し前にBMWの色替えをしたばかりですが、またまた全塗装です!
実は他にも全塗装の予約済みで入庫を待っていただいているお客様が数名いらっしゃいます😅
全塗装を検討していたり気になっている方は思った以上にいらっしゃるんですね~。過去の投稿の中でも全塗装の記事は閲覧数が多いです。

車の状態はというと、ボンネットのヤレは目立ちますがパッと見は全体的に綺麗です。
ですが細かく見ていくと凹みや歪み、その他おかしな所があちこちあります。

まず一番目立つボンネットの劣化。ボンネットはパネルの中でも車の顔なので、これだけで車全体がヤレて見えてしまいますね。

次に目立つのがトランクと幌間のパネルの歪みです。ボコボコに波打っています!
お客様がこの車を購入された時には既にこの状態で気になっていたとの事。確かにこれは嫌ですよね😓
だいたい予想はつきますが、原因を確認して修理していきます。

左側面には全体に渡って旧車あるあるのクラック。光が当たるとよくわかります。線傷に見えますが、塗膜が劣化して色が細かくヒビ割れているので磨いても消えません。
足付けをしてこのまま塗装してもまた浮き出てくるので、全面サフェーサーを入れて綺麗な下地を作り直すしかないですね。
目立つ箇所は以上ですが他の細かな箇所も含め修理していきます!

いきなりペーパーを当ててしまうと小さな凹みや歪みが見えなくなって見落としてしまうので、まずはテープでチェックしていきます。
綺麗に見えましたがチェックしてみると細かな凹みや歪みが結構ありました。
塗装して全体がピカピカになると尚更、その小さな凹みなどが今より目立つようになるので最初のチェックはとても大事です!

まずは一番手がかかりそうなリアパネルから。
メッキモールと幌の取付を外してみると予想通り、凹みの後ろには全て取付のボルトがありました。
このボルトはボディに固定してあり、メッキモールと幌を車内側からプレートで挟みナットで締めこんで固定されている構造です。
でもなぜこんなにボコボコになってしまったのでしょう?
幌の取付部に過去に作業した形跡がありましたが、その際ナットを締めこみすぎたのでしょうか?
ネットで画像を検索してもココがこんなに波打っている車は見当たらなかったので、この車のあるあるな事例でもなさそうなんですが💧
ともあれ、塗装前には一度幌を元に戻してまた凹まないか確認してから塗装に移ります。
塗装してから組付けや幌の開け閉めでまたボコボコになったら台無しなので💦

鈑金がほぼ完了しました。

パテで細かく成形中。

サフェーサーが入りました。

並行して分解を進めます。
ボンネットは逆開きでクラシカルですね~。今では一部の車にしか採用されていませんね。
このタイプは今どきの車のようにポン付けで位置がほぼ決まるものではなく、取付部の調整がかなり効くようになっていることが多いと思います。
ボンネットが上下左右に動かせてしまうので塗装後の取付でせっかく塗装したボンネットとボディをかじらないように、いつも以上に気をつけて調整しなければいけません。

サイドスカートを取り外しましたがこれがかなり大変でした!片側外すだけで1時間近くかそれ以上かかりました😰
ガラスボンド山盛りでベッタリと貼り付けられていたんです💦

スカート側も土台が見えないくらいテンコ盛り!ボンドの重みでかなり重いです。
これって純正でこの取付方法なんでしょうか?たぶん違いますよね?笑
最近でもフィアット500やアバルト595のサイドスカートはボンド留めのタイプもあったりするので、もしかしたらこれが正規の取付方法?
過去に作業した形跡があったので、おそらく前に作業した人がボンド貼り付けに変更したんだと思います。勘弁してほしいです…泣

残ったボンドは綺麗に除去しました。一気に軽くなりました!😅
塗装後は両面テープでの取付に変更します。またボンドでベッタリ貼り付けてしまうと、もし今後サイドスカートの修理や交換をすることになった場合に取り外すのが大変すぎますからね!
今回はボディもツルっとサフェーサーを入れるので問題ないですが、外し作業と残ったボンドの除去でボディのロッカーパネルはズタズタになってしまいました。この取付方法では無傷で外すのは不可能です😓
今後スカートを外すだけでボディまで傷だらけにならないために取付方法変更です!

フェンダーの一部が下からプクプクきていたので削ってみるとやはりパテが入っていました。
その部分の古いパテは問題があるので削り落として入れ直しました。おそらく他にもあちこちパテは入っていますが車の全面を鉄板まで出すようなことはYKBでは基本的にしません。それはそれで別のリスクがありますし収拾がつかなくなります。現状おかしな箇所や怪しい箇所はもちろん直します。
広範囲を一気に鉄板まで出してから下地作業やサフェーサーを入れたりするカスタムショップやレストア屋さんなども中にはあると思いますが、かなりリスクがあると僕は思います。
剥き出しの鉄板は空気に触れてどんどん酸化していきます。加えて日本は多湿です。鈑金中で鉄板が出た状態の部分は数日もすると目視で確認できるぐらいの錆びが表面に発生していたりします。
長時間空気に触れた剥き出しの鉄板を適切に処理せずサフェーサーで蓋をしてしまうと中で腐食が進行し、時間が経ってから表にプクプクと異常が出てきたりします。
なんでも鉄板まで出せばいいという訳でもないんです😓しっかり表面処理をするにしても全面剥離はリスクがありますからね~💦

まずはこの日に入れられる分のサフェーサーを入れました。時間があっという間に過ぎていきます💦

後日確認しているとフェンダーのアールに若干の違和感があったので修正。再度サフェーサーを入れます。

トランクに付くハイマウントストップランプはお客様の希望で無くすので、取付の穴をスムージングしました。

これでサフェーサーを入れる工程までがひとまず完了です!
この後の研ぎでおかしな部分があれば再度サフェーサーを入れますが、一区切りといったところです。

まずはボンネットとトランクの裏を塗装しておきます。

色を吹き終わったらクリアの前にブース内を暗くして手持ちライトでメタリックのムラなどが無いか確認します。

クリアを塗装して完了です。

サフ研ぎの前に幌とモールを付け直し、また凹んでしまわないか確認します。
大丈夫そうです!

サフを研いでボディを塗装する準備を進めます。

サフ研ぎが終わったらマスキングをして塗装です!

ベースコートが完了!
色付きが若干悪かったので6回ほど塗りました。インターバルもしっかりとり時間をかけて塗りました。
すぐにクリアの塗装には移らず時間をおいて自然乾燥させます。
色に含まれる溶剤を揮発させるためです。時間を空けず追っかけでクリアを塗ってしまうと中膿みというトラブルに繋がります。
色の中に溶剤がまだ沢山含まれているのに上からクリアで蓋をしてしまうと、表面は先に乾いてしまい中は半乾きといった状態になります。
色の中の溶剤は外に出たいのに蓋をされて出られない感じです。中膿みをしてしまうと塗装後にどれだけ時間が経過しても改善しません。表面のクリアは乾いても中の色はずっと柔いままです。
シルバーではあまりないですが、3コートパールや低隠蔽色(赤、黄色など)は塗膜が厚くなりやすいのでしっかりセッティングタイムをとらないと中膿みのリスクが高いです。

色が乾いたらクリアを塗ってボディは完了です!

次はボンネット、トランク、ドアの塗装です。

乾燥後にトランクの取付けとチリ合わせ。
ボコボコだったトランク前のパネルも歪みなくバッチリ直ってます👍

ボンネットも取り付けます。
以前テスタロッサのボンネット調整をした時もそうでしたが、やはりこの逆開きのボンネットは上下左右にかなり動くので調整が大変です。何度もチリの確認と微調整を繰り返します。
加えて一歩間違うとボンネットのエッジとボディのノーズが当たってしまうのでヒヤヒヤです💦
せっかく塗装したボンネットとボディをかじらないように慎重に調整しました。

無事、取付と調整が完了しました!
カウルトップを取付けてから再度チリの確認をしますがおそらくこのままでOKです。
まだバンパーや小物の塗装は残っていますが少しずつ形になってきました!

残りのパーツを塗装します。

この時は7月末ぐらいでしたが午前中で既にブース内の室温は40℃🥵
拭いても拭いても汗が噴き出してきます💦
塗装面に汗を垂らしてしまわないように、小まめに汗を拭きながら気をつけて塗装しました!

これにて塗装の99%は完了です!残りはフロントバンパーの一部をマットブラックで塗装するのみです。
乾燥後に塗装します。

左のドアを取り付けました。立て付けも運良くすんなり決まりました✨

錆びてボロボロのドアチェックは左右とも交換します。表面を覆っているプラスチックが無くなって鉄の芯が剥き出しになってしまっています。
これではドアチェックの意味がありません。ドアチェックが機能していないとドアを開閉したときに止まる部分がなくパカーンと開いてしまいます。
この部品を含め今回交換する小部品やゴム類はすべてお客様が用意して下さいました!

パワーウィンドウのレギュレーターとドアのインパクトビームに挟まれた極狭な間を通すので一筋縄ではいきませんでした。
DIYで挑戦する方は要注意です!
そのままでは物理的に通らないのでレギュレーターを一旦外したんですが、パワーウィンドウのワイヤーがローラーから外れてしまって💦
ワイヤーを巻きなおすのに悪戦苦闘しました。軽いトラウマです😅

三角窓のゴムも交換しました。スカッフプレートはくすんでいたので軽く磨いてピカピカに😃

リアバンパーとフューエルリッドを取り付け。
サイドマーカーの右側のライトが暗かったので外してみたところ右側のみスモークのかかったバルブになっていました。
新品に交換してしっかり明るく光るようになりました👍左は明るかったですがついでに新品に交換しておきました。
このサイドマーカーのバルブを交換するだけでもリアバンパーを外さないと交換できないんです💧
今のうちに左右とも交換しておくのが吉です。

給油口裏のゴムは劣化して裂けていたためお客様に報告後、追加で交換しました。このままではトランクルーム内に雨漏りする可能性があります。

右ドアを取り付け。

ガラス周りのゴムを交換するためガラス屋さんに依頼。

完了です。四方にメッキモールが被るのでほとんど隠れちゃいますけどね😅
とはいえ今回のような大掛かりな作業を機に劣化したゴム類をリフレッシュするのはいいと思います。
今回お客様が用意された部品もほとんどがゴム類です。トランク開口部や左右ドア開口部のウェザーストリップも交換しました。
閉まり癖の付いていた古いウェザーストリップから新品に交換すると、まだ癖も付いておらずゴム自体の張りもあるのでドアの閉まりが一時的に悪くなったりすることがあります。しばらくしてゴムが馴染んで癖がつけば改善されると思います。(建付けの調整がしっかり合っていれば)
今回ドアの閉まりは良い感じですがトランクの締まりが若干悪い気がします。納車までまだ時間があるのでしばらく経っても改善されない場合は再度微調整します。

磨きの妨げになる部品以外の組付けが済んだのでボディを磨いていきます。
さらにピカピカにします!

フロントバンパーの乾燥が終わったのでグリルの塗装です。ここは別パーツではなく一体成型で塗り分けがされています。
ここは塗装するつもりではなかったのですが、過去に塗装された際のマスキングがラフすぎて色がかなりはみ出していたので塗装することにしました。
些細な部分ですが車の顔ですからね~。
綺麗に見切れたと思います。

アッパー面などは磨きづらくなるのでバンパー単体で磨いてからボディに取付。

サイドスカートも磨いてから取付。
先述したように側面はボンドではなく両面テープで固定したので、この先外すことがあっても短時間でボディを傷付けずに外せます!
下側はボルト・ナットで固定なので脱落の心配もありません。

いよいよゴールは目前です!
リアに付く「alfa Romeo」と「SPIDER VELOCE」のエンブレムは再使用するので古い両面テープを除去したあと、文字に合わせて両面テープを貼り直します。
小さくて細い文字の貼り直しはすごく大変で時間がかかります!
この「VELOCE」の剥がしと貼り直しだけで1時間近くかかりました💦残りも貼り直します!

いつものようにエンブレムを剥がす前に寸法を測っておいたので元位置に貼り直し完了です!
曲線の多い筆記体の「alfa Romeo」の貼り直しも大変でした😅

三角窓のロックをかけた際にレバーがガラスから取れてしまいました💦
お客様に取れてしまったことを報告させていただいたところ、この車のあるあるだそうです。
理解のあるお客様で助かります💦お客様はこの車に関しての知識がすごく豊富でしたのでこちらも勉強になります🤓
取れてしまったレバーは2液のエポキシボンドで再度接着します。ロックする際ゴムの反発でレバーに力がかかるのでまた取れてしまうかもしれませんが出来る限りの事はしました😓

残りの組みと磨きを済ませて完成です!
納車直前でバッテリーが死んでしまったり、作業中も小さなトラブルがいくつもありましたが無事納車を迎えることが出来ました!

思い返せばあらゆる作業においてスンナリいく事のほうが少なかったように思います。
やはり国産車に比べて古い輸入車はバラシや組みなどで特に手こずる場面が多かったです。劣化した部品が壊れてしまったり、ボルトが錆びていて削り落さないといけなかったりはあるあるです。

美しい~😊酷かったボンネットもツヤツヤです。
今回は内側の塗装もオーダーいただいたのでボンネット、トランク、ドアの裏や開口部もツヤツヤの贅沢仕上げです😄
裏側や開口部は新車時からツヤが無かったりクリアの掛かりが不均一でザラザラだったりする車が多いですが、そういった部分も全てクリアでツルツルになるのはいいですね!

トランクに付くハイマウントはスムージングしてスッキリしましたね。

テールレンズの劣化していたラインテープはラッピングなども行っている業者さんに貼り直してもらったので、車をグルっと見回してもヤレ感のある部分が無くなりました✨

このところ天気の不安定な日が続いていましたが、この日は晴天に恵まれて最高の納車日和でした😀
お客様も早速屋根をオープンにして帰られました😄最高ですね!
夏も終わってこれからドライブ日和なシーズンなので楽しんで下さいね~。